事業会社で展示会などのプロモーション&マーケティングを担当した経験をベースに「展示会のご担当者様向け」に実践的なノウハウを記載しています。
展示会はこれまで接点が無かった顧客との重要なタッチポイントですが企画段階で検討・考慮しておく必要がある内容がいくつかあります。無理な目的、目標を設定した出展ではなく、社内関係者と共有して進めることができる実践的な展示会マーケティング施策のノウハウとテンプレートをご紹介します。
今回は「効果的な出展企画のポイントをまとめて整理」しました。
基本コンセプト設計 ~ ポジショニングと目標設定 ~
展示会マーケティグ実施にあたり、まずは出展の目的や目標値を定める必要があります。目的・目標の妥当性を検討するにはその展示会の来場者に「企業名あるいは製品・サービス名」がどの程度認知されいるのか、ライフサイクルや成長マトリクスにおいてどこに分類されるのかを整理しておく必要があります。
例えば、成長期(製品によっては黎明期)市場の展示会は一般的に来場者数も多く、導入検討(情報収集目標だけではない)を進めるために来場している方も多くいると考えらます。このようなケースでは、その展示会において企業名や製品・サービス名の認知度が低くても次の項目でご紹介するコンテンツ設計がうまくいけば多くの名刺情報や商談機会を獲得することが期待できます。
一方で、成熟期の市場に企業名や製品・サービス名の認知度が低い状況で出展する場合は先の例と同じような目標値を設定しても苦戦が予想されます。
名刺1枚の獲得単価は○○○円に設定するべきといった話はありますが、自社のポジションや製品・サービスが属している市場のライフサイクルにより大きく異なることが考えられます。
「社外スタッフ(コンパニオン)を活用すれば名刺情報は獲得できる」という考え方もあるかと思いますが、来場者にエンジニアが多い技術系の展示会では「じっくり説明を聞きたい」とニーズも多いので名刺を集めるだけに注力したブース運営はそのような来場者の満足度を下げてしまう可能性があります。この内容については後の「ブース設計」「展示会の特性と種類」の項目に記載します。
項目 | 選択肢/数値設定 | ||||
企業名 | 認知度 | 高 | 中 | 低 | – |
製品・ サービス | 認知度 | 高 | 中 | 低 | – |
ライフ サイクル | 黎明期 | 成長期 | 成熟期 | 衰退期 | |
成長 マトリクス | 新規市場×新規製品 (新たな収益機会) | 新規市場×既存製品 (新規市場開拓) | 既存市場×新規製品 (置換え/クロスアップセル) | 既存市場×既存製品 (シェア拡大) | |
出展の目的 | 名刺情報の獲得 | 商談機会の獲得 | 市場調査 | – | |
目的に対する目標値 | ・受注見込み金額/件数 ・名刺情報獲得数 ・有効なアンケート数など |
コンテンツ設計 ~ ターゲティング 訴求ポイントの整理 ~
基本コンセプトの大枠が決まり出展する展示会での自社(製品・サービス)のポジショニングを明確にしたところで、次に取り組みたい内容は「どのような内容」で訴求していくかになります。
そのためには展示会以外の媒体での訴求内容についても考察しておく必要があります。媒体には「自社メディア(オウンドメディア)」、「有料広告メディア(ペイドメディア)」、「Google広告など(クロスメディア)」があります。
展示会のブースで「どのような内容」を訴求するかを整理する際に媒体全体を俯瞰して訴求内容を整理することで展示会の役割(ターゲットと訴求する内容)を明確にすることができます。
媒体 | ||||
訴求ポイント | 展示会 | Web(自社) | メール(自社) | 有料広告 |
興味・関心 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 |
課題・解決方法の提示 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 |
信頼感の醸成 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 |
機能的な価値 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 |
情緒的な価値 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 | ◎ / ○ / △ / × 優先度 |
【訴求ポイントの例】
・興味・関心 ・・・ 技術トレンド/法規・規格対応 など
・課題・解決方法の提示 ・・・ 品質向上/業務改善・効率化 など
・信頼感の醸成 ・・・ 導入実績・効果/サポート体制 など
・機能的な価値 ・・・ 高速処理・解析/従来製品比2倍 など
・情緒的な価値 ・・・ 親切で丁寧な対応/伴走型で成功に貢献 など
ブース構成 ~ 集客キーワード配置 ~
自社の展示ブース内レイアウトを決めるのにあたり、まずは「コンテンツ設計」で整理した訴求ポイントをブース内のどこに配置するのか検討します。多くの来場者の目的は情報収集で、歩きながら理解できる文字量は最大でも13文字程度と言われています。そのため限られたスペースに限られた文字数で効果的に集客につながるキーワードを配置する必要があります。
例えば、出展する展示会において「社名」でブース集客を見込めるポジションを築いているならブースの一番目立つスペース(通常は最上部のパラペット部)に社名がしっかり視認できるように配置します。社名や製品・サービス名の認知度が低い展示会の場合は、解決できることをキーワードにして目立つスペースに配置します。
また、各展示会は主催社が展示会集客のためのテーマを設定しています。このテーマとのキーワードのマッチングも集客につながる要素となります。さらに、主催社が併設で開催するセミナーがある場合はセミナーの基調講演や各セミナーのタイトルやアブストラクトに重要なキーワードが盛り込まれているケースが多くありますので併せてチェックしましょう。
キーワード配置スペース | キーワード |
最上部キャッチ(1番目に目立つスペース) | 13文字以内 |
側面・コーナー名称部分(2番目に目立つスペース) | 13文字以内 |
パネル(各展示)タイトル | 13文字以内 |
項目 | キーワード |
展示会のテーマ | 集客キーワードを探す |
基調講演/セミナー タイトル・アブストラクト | 集客キーワードを探す |
ブース設計 ~ レイアウト ~
ブースレイアウトの構成要素は以下があります。ブース内でセミナーを実施する場合は集客が見込めるか否かスペースを有効に活用するために慎重に判断する必要があります。技術系の展示会では「じっくりとデモを見て説明を聞きたい」「質問がしたい」などニーズが多くあるのでそのためにスペース(デモ/商談スペース)を割り当てする方がよいケースもあります。
構成要素 | スペース割合 |
展示スペース(動態/静態展示) | 動態(デモ)展示を目立つ場所に |
セミナースペース | セミナーへの集客数を考慮 |
デモ/商談スペース | 技術系展示会にはスペースが欲しい |
受付 | 名刺情報収集のオペレーションにより設置 |
ストック | アンケートやノベルティ置き場として |
展示会の特性と種類 ~ セグメント 顧客分析 ~
展示会(展示会場で開催されるリアル展)と他のWebなどの媒体との違いは、その場で実際に製品を見ることや触ることができる=リアルな体験ができることにあります。
また、わからないこと質問して多くの場合はその場で回答を貰うことができます。さらに、本格的に導入(購入)を検討しているケースでは他社製品やサービスとの比較がその場で実現するので効率的に選定を進めることができます。
このような機会を求めて来場される方に対して名刺情報を取得することだけに注力したブース設計や運営はやや配慮に欠けている部分があるかも知れませんので注意しましょう。
展示会の種類としては以下のようなものがあります。
【展示会の種類】
・技術テーマの展示会 (AI・サイバーセキュリティ・クラウドなど)
・産業分野テーマの展示会 (自動車・医療・外食など)
・複合展示会(複数の専門展を同時に開催)
産業別の展示会では、自社のターゲットと異なる来場者が多くを占めている場合もあります。このようなケースでは闇雲に名刺情報を集めても有効な情報の数は少なくなります。
展示会のブース運営を決める上で予めターゲット顧客がどの程度来場しているのか、主催社が発表している前回の開催結果の報告書を調べたり主催社の担当者に確認して分析する必要あります。
【前回 開催報告書の分析例】
・来場数(母数)
・ターゲット部門の来場者数
・企業規模(資本金、売上高、従業員数など)
→自社製品・サービスのターゲット来場数を把握する
まとめ
今回は、展示会に出展しているが狙った成果が出ていない、これから展示会に出展したいが社内調整に時間がかかっているなどでお困りのケースを想定して、主に出展の企画段階に検討したい内容についてまとめました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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